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協調演習から見えるもの

協調演習の成果

本取組の主題である協調演習とは,学生たちが互いに教えあうことによって理学的知力を身につけようとする取組です。理学部では講義で得た知識を「知る」から「わかり」「使える」ものへと転換させるために,学生と教員の,そして学生同士の深い信頼関係をベースに協調演習を実施してきました。協調演習で学習者のコミュニティーを形成することによって,成績の振るわなかったものは学習態度が変容し,成績の優秀なものは「教えることによって学ぶ」のです。私たちはこのような協調演習により磨き上げた知識を相互にリンクさせることにより,「使いこなせる確固たる知識」に裏打ちされた創造性豊かで新しい学問領域のフロンティアとして活躍する研究者の育成を実現することができると信じています。

[1] 全体の成績の著しい向上

全体の成績の著しい向上

平成18年度は,先導的・試行的取組として2年生後期授業「有機化学演習」の中で専門的協調演習を実施しました。 76名のクラスを2つのグループに分け,Aグループ5名×8班での協調演習を行いました。一方,Bグループは対象群として通常の演習形式での演習(5問程度の演習問題を一定時間解かせた後,教員が講義中心の解説を加える)を行いました。成績の評価は,いずれのグループにとっても新規な問題を最終試験として解かせることにより行いました。その結果,以下のような教育効果が明らかになりました。

[2]上位層と下位層の成績の伸び

事前の有機化学の成績により,学生を上位,中位,下位の3層に分け,各層ごとに演習による成績の変化を調べました。その結果,事前の成績が下位であった者については,BグループよりもAグループの方が事後の成績の伸びが大きいことがわかりました。これは,成績下位であった学生が協調学習によって,Helperをはじめとする友人たちにさまざまな誤概念を修正された効果と考えることができます。一方,成績が上位の学生についても,BグループよりもAグループの方がはるかに事後の成績の伸びが大きくなりました。この結果は,成績上位の学生はHelperになることによって有機化学の概念を俯瞰し,再構築する機会を得たと考えることができます。すなわち,「教えることによって学んだ」のです。

■各成績層での演習後の成績の伸び


協調演習型実施群
事前 事後 成績上昇
上位層 71.6 82.8 11.2
中位層 56.5 62.0 5.5
下位層 28.7 48.8 20.1
対象群
事前 事後 成績上昇
70.5 74.6 4.1
55.4 56.2 0.8
24.7 21.5 -3.2

成績上位層(Helper層)および成績下位層(Learner層)で、
協調演習実施群の成績の伸びが大きい。

[3] 全科目成績の向上

事前の有機化学の成績により,学生を上位,中位,下位の3層に分け,各層ごとに演習による成績の変化を調べました。その結果,事前の成績が下位であった者については,BグループよりもAグループの方が事後の成績の伸びが大きいことがわかりました。これは,成績下位であった学生が協調学習によって,Helperをはじめとする友人たちにさまざまな誤概念を修正された効果と考えることができます。一方,成績が上位の学生についても,BグループよりもAグループの方がはるかに事後の成績の伸びが大きくなりました。この結果は,成績上位の学生はHelperになることによって有機化学の概念を俯瞰し,再構築する機会を得たと考えることができます。すなわち,「教えることによって学んだ」のです。

■協調学習による留年率変化とGPA変化

協調学習による留年率変化とGPA変化

[4] 自主性と学習意欲の向上

協調演習を実施しなかったBグループでは最終試験放棄者数が6名(約15%)おりましたが,協調演習を行ったAグループでは,試験を放棄した学生が皆無でした。これは教員が学生に演習問題を強制的に解かせているのではなく,協調演習の中で学生が自ら学ぶことをENJOYし,学生どうしが互いに支えあった結果と見ることができます。この結果は,この協調演習が「引きこもりがち」だとされる現代若者気質の改善,すなわち人間性の育成にも効果があることを示しています。

自主性と学習意欲の向上

協調演習の成果

専門的協調演習を実施した有機化学演習の授業評価アンケートでは,「授業に積極的に取り組み,授業の難易度は適切で,知的な刺激を受けた」という回答が多く,「グループで皆で一緒に助け合って考えられて,さらに口で説明できる力も身についたので,従来のものよりも楽しかったし,知識も身についたと思う」という記述も見られるなど,協調演習を肯定的に受け止めている学生が全体の78%にのぼりました。しかし一方で「同じグループ内で分からないのではなく予習をしていなくてぜんぜんついていけない人がいると,話し合いしても一方通行になった」という意見を持つ学生もいました。ここで重要なのは,この学生は他の学生が有機化学が「わからない」「できない」という成績・成果に不満を持っているのではなく,「予習をしていない」という態度に対して不満を表している点です。例えば学生たちは担当の教員から「予習をしていない」ことを指摘されても反発することが多いのですが,同じクラスの仲間から言われると心に響くことが多く,多くの場合,指摘を受けた学生の態度変容につながります。

アンケート質問内容 協調演習実施群 対照群
質問や発言などにより、あなたは授業に積極的に参加しましたか? 78 63
授業内容の難易度は適切で、理解可能な範囲でしたか? 73 68
あなたは授業により知的な刺激を受け、さらに関連する分野を学んでみたいと思いましたか? 75 68
あなたにとって、授業の進度は適切なものでしたか? 70 65

協調演習実施群では32件の自由記述内容のうち25件(78.1%)が協調演習に賛成の意見であった。

(広島大学教育室教育評価委員会調べ)

このように学生たちは,協調演習を通して,教えることによって自ら学ぶことを体験し,教えることで自分の能力を磨けるということに気づいたのです。事実,演習以外の時間にも理学部のロビーやオープンスペースなどで学生たちが「教えあっている」姿を数多くの教員が目撃しています。また「教えあう」内容もノートを見せあうなどの形式的な協調学習から,授業で取り扱わなかった発展的な内容に関して議論するなど,協調学習の質的変容が見られるようになりました。

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